職業選択は精神健康にも大きな影響を与えることがわかった。最近の研究によると、芸術やデザイン分野に従事する人々は、精神疾患に対する遺伝的素因が他の職業群よりも高い傾向があるという。この遺伝的素因には、神経性やせ症、双極性障害、自閉症、統合失調症、うつ病などが含まれる。一方で、コンピュータ関連の職種に従事する人々は自閉症の遺伝的素因が高い一方で、うつ病やADHD（注意欠陥・多動性障害）に対する脆弱性は低いことが明らかになった。
教師は21の異なる職業群と比較して、神経性やせ症やADHDの兆候を示す割合が高いとされる。また、ソーシャルワーカーはうつ病に関連する遺伝的特性を多く持つ傾向があり、農業従事者、漁師、伐採業者はADHDの遺伝的素因が高いとされている。ADHDは清掃員、料理人、ウェイター、工場労働者、建設作業員、警察官、バス運転手、美容師など多岐にわたる職種で最も関連性が高いとされている。
しかし、研究者らはこれらの遺伝的素因が職業選択に与える実際の影響は非常に小さいと指摘している。これらの遺伝的特性が特定の職業選択に影響を与える割合はわずか0.5％程度であり、むしろ年齢、性別、学歴などの要因がより大きな影響を持つという結論が得られた。この研究を主導した精神科医ジョルジオス・ボルダキス氏は、特定の遺伝的変異が一部の職業で利点をもたらす可能性についての調査を開始したと語っている。また、「これらの遺伝的変異が特定の状況下でどのような潜在的な利点を持つのか、こうした一般的な変異が人々の間で広がり続けている理由を解明したかった」と説明している。
さらに、研究チームは特定の遺伝的素因を持つ人々が一部の業界に進出する可能性が低いことも明らかにした。特に、ADHDの遺伝的素因を持つ人々は建築、技術、ビジネス、教育、法律、医療分野で働く割合が低いとされている。ボルダキス博士はこれについて、「これは意識的にこれらの職業を避けたわけではなく、ADHDの遺伝的素因を持つ人々が学校生活において困難を経験する傾向があるためではないか」と述べている。「教育システムの偏りがADHDの遺伝的素因を持つ人々に不均衡な影響を与えている可能性がある」と彼は補足している。
