ホーム トレンド トイレ休憩は「社会の縮図」だった?チンパンジーの「おしっこの連鎖」に階級社会の秘密

トイレ休憩は「社会の縮図」だった?チンパンジーの「おしっこの連鎖」に階級社会の秘密

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チンパンジーの群れにおいて、1頭が排尿すると他のチンパンジーも続いて排尿する「伝染性の排尿(contagious urination)」現象が見られ、この行動には個体間の親密度や社会的階級などが影響を与えるという研究結果が発表された。

引用:熊本サンクチュアリ
引用:熊本サンクチュアリ

京都大学の山本信也教授らの研究チームは21日、科学誌「カレント・バイオロジー(Current Biology)」で、熊本サンクチュアリにいるチンパンジー20頭を対象とした研究でこの事実を発見したと発表。この結果は、排尿行動の社会的機能に関する興味深い疑問を提起すると述べた。

論文の筆頭著者である大西恵奈研究員(博士課程)は、「人間にとって、一緒に排尿する行動は社会的現象とみなすことができ、多くの世紀や文化圏にわたり芸術作品に描かれ、現代社会でも見られる行動である」とし、「この研究は、この現象に深い進化的起源がある可能性を示唆している」と語った。研究チームは、熊本サンクチュアリのチンパンジーたちがほぼ同時に排尿する様子を観察し、この行動が人間の間で見られる「伝染性のあくび」と類似したものかどうかを調べるための研究を開始したと説明した。

チンパンジー20頭の排尿行動を600時間以上観察し、1,328回の排尿行動を記録した。さらに、このデータを分析し、チンパンジーの排尿が時間的に有意に同期しているか、周囲の個体や社会的要因の影響を受けているかなどを調査した。その結果、チンパンジーがほぼ同時に排尿する現象が起こる確率は、互いに無作為に排尿する確率よりも著しく高いことが判明した。つまり、排尿の同期現象が個体間で明確に生じていることが示された。また、他の個体に続いて排尿する「伝染性の排尿」の可能性は、最初に排尿したチンパンジーと物理的に近い位置にいる個体ほど高く、社会的階級が低い個体ほど他のチンパンジーが排尿する際にそれに続く可能性が高くなることが明らかになった。

研究チームは、この結果が、チンパンジーの排尿パターンが社会的階級の影響を受け、排尿行動が支配構造に基づいて下位へと伝播する傾向があることを示唆していると述べた。大西研究員は、「チンパンジーの排尿伝染パターンが、社会的地位の影響を受けることに驚いた」とし、「当初はあくびのように親密度の影響が大きいと予想したが、そのような効果は見られず、代わりに社会的地位の影響が明確に観察された」と語った。

研究チームは、この研究が、日常的な行動に内在する社会的重要性が見過ごされる可能性があることを示すものだとし、集団の結束力維持や協力促進、社会的絆の強化において排尿行動が果たす役割を理解する上で、重要な意義があるかもしれないと説明した。さらに、チンパンジーの伝染性の排尿の背後にある特定の機能やメカニズムを解明するには、さらなる研究が必要であり、この現象が他の種にも存在するかどうかが興味深いと付け加えた。

山本教授は、「このような群れ行動の同期には、隠れたリーダーシップや社会的結束感などが反映されている可能性がある」とし、「多様な解釈の可能性を提示するこの研究結果は、伝染性の排尿の社会的機能に関する興味深い疑問を投げかけている」と述べた。

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