肉を焼く際の調理法によっては、発がん物質が大量に発生する可能性があるという衝撃的な研究結果が報告された。特に、肉の風味を引き立てるために何気なく加える調味料が、実は健康に悪影響を及ぼす原因になり得ることが判明した。

食品医薬品安全処が実施した実験によると、肉を焼く前に胡椒を振りかけると、発がん物質「アクリルアミド」の含有量が最大14倍になることが分かった。
具体的なデータを見てみると、肉を焼いた後に胡椒を振った場合、アクリルアミドの含有量は492ng(ナノグラム)だったが、焼く前に胡椒を振ると7,139ngまで急増した。これは、多くの人が普段何気なく行っている調理習慣が、健康に悪影響を及ぼす可能性があることを示している。

また、肉を焼く際の火力調整も重要であることが明らかになった。よく焼いた「カリカリの肉」は香ばしく美味しいが、実は健康にはあまり良くない可能性がある。研究によると、200度以上の高温で焼いた場合、発がん物質「ヘテロサイクリックアミン(HCA)」の生成量が3倍になることが分かっている。そのため、専門家は150〜160度の中火でじっくり火を通すことを推奨している。
調理時の換気も見過ごせないポイントだ。換気を十分に行わずに肉を焼くと、非喫煙者でも肺がんリスクが高まる可能性がある。焼いた際に発生する煙には、多環芳香族炭化水素やベンゾピレンなどの発がん物質が含まれており、これらは受動喫煙と同程度の健康リスクをもたらすことがある。そのため、必ず換気扇を回し、窓を開けて空気を入れ替えることが重要だ。
換気をしっかり行うことに加えて、発がん物質への曝露リスクを減らす方法もある。「農業と食品化学」誌に掲載された研究によると、肉をビールやワイン、またはハーブマリネードに約2時間漬け込むことで、HCAの生成を大幅に抑えられるという。HCAは、豚肉や鶏肉、魚などの食材を高温で調理する際に、焦げたり黒く焼けた部分で発生する有害物質の一種だ。
家庭でも簡単に作れるハーブマリネードのレシピは以下の通りとなる。
タイム、ミント、セージ、ローズマリー、オレガノ、バジルの中から好みのハーブを選び、果汁を絞る。それにレモン汁やワイン、酢を加えれば完成だ。時間がない場合は、ハーブを直接肉に擦り込むだけでも効果が期待できる。ハーブに含まれるチモールやフェノールなどの成分には、発がん物質の生成を抑える働きがあるとされている。
専門家は「正しい調理法を実践すれば、発がん物質の心配をせずに肉を楽しめる」と強調する。肉を焼く際には、胡椒は焼いた後に振り、中火(150〜160度)で焼く。また、十分な換気を行いハーブマリネードに漬けるといったポイントを意識することが重要だ。