昨年10月、東京・港区西麻布に有料老人ホーム「パークウェルステイト西麻布」が開業した。
表参道や六本木が徒歩圏内という好立地にあり、大手デベロッパーの三井不動産が富裕層向けに手掛けた施設だ。
同施設の入居一時金は前払い方式で、最大5億4,726万円に達する。月額利用料も53万6,900円と高額だが、入居前の問い合わせは4,000件を超えた。
国内では民間デベロッパーによるシニア向け住宅の開発が活発化している。購買力のある「アクティブシニア」向けの超高級施設から中間層や低所得層向けの住宅まで多様な選択肢が提供されており、少子高齢化の進行とともに市場競争は一層激化している。
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◇温水プール完備の超高級有料老人ホーム
先月20日に訪れた「パークウェルステイト西麻布」は36階建ての高齢者向け住宅だ。外観は高級ホテルを凌ぐほど洗練され、1階には池を備えたプライベートガーデンが広がる。入居者は帝国ホテルの朝食を楽しめるほか、共用スペースには図書館やカラオケルーム、麻雀室などが設けられ、快適な生活環境が整っている。
4階から34階には、60歳以上の健康な高齢者向けの「一般室」340室を配置。入居一時金は部屋の広さに応じて1人用(42㎡)が6,354万円、2人用(130㎡)は最大5億4,726万円に設定されている。9階には温水プールを備え、最上階(35~36階)では都心の眺望を楽しみながら、帝国ホテルのシェフが手掛ける和食、洋食、中華料理を味わえる。
近年、日本の高齢者向け住宅では健康なうちに入居し、終末期まで介護を受けられる仕組みが一般的だ。一方、韓国の老人ホームは身体機能が低下してから入所するケースが多く、制度の違いがみられる。「パークウェルステイト西麻布」では入居後に介護が必要になった場合、政府の認定を受けた「介護室」(2~3階)へ移動し、継続して生活することが可能だという。
三井不動産はこうした高齢者向け住宅を今後も毎年1棟ずつ増設する計画を進めている。関係者は「不動産市場では超高齢社会を迎えた日本で有料老人ホームなど『終末期の住まい』への需要が高まっている」と述べた。
◇別荘風の24時間介護システム完備施設
「パークウェルステイト西麻布」から徒歩5分の場所にはケア21が運営する高齢者向け住宅「プレザンリュクス南青山」がある。2022年7月開設の介護型施設で、地上5階建ての外観は高級別荘を思わせる。
1階にはグランドピアノや高級オーディオ、暖炉を備えたレストランがあり、入居者は日本庭園を眺めながら有名シェフの料理を楽しめる。医師と看護師が常駐し、軽症から認知症まで幅広く対応。介護スタッフも24時間体制で支える。
「プレザンリュクス南青山」はパークウェルステイトと異なり、入居一時金不要だが、月額利用料は最高104万1,200円に達する。ケア21は東京を中心に首都圏で25施設を運営している。
一方、中間層や低所得層向けの高齢者住宅も多い。成田国際空港から車で約25分の「杜の家なりた」は社会福祉法人「福祉楽団」が運営する特別養護老人ホームで、65歳以上で日常生活が困難な高齢者を受け入れる。定員120人は満室で、地方でも高い需要がある。
入居者には24時間のケアサービスが提供され、費用は月額最低8万円。政府が介護費用の4割~6割を補助し、運営の採算も確保されている。杜の家なりたの安倍明子事業部長は「公的支援により、低所得層の高齢者も安心して暮らせる」と述べた。